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第5回シャーロック・ホームズ読書会フォローアップ

2018 年4月7日(土)に「第5回シャーロック・ホームズ読書会」を開催しました。

会場は名古屋国際センター。課題作品は『バスカヴィル家の犬』です。

課題作品。左が河出書房新社、右が創元推理文庫。

5人の方に参加いただき、内1名は初参加の方でした。イギリスで買ったホームズのピンバッジを付けてこられた方もいらっしゃいました。主催者も最近入手したバイオリンのピンバッジを付けて行きました(バイオリンはホームズのトレードマークの一つ)。

映画鑑賞

読書会前にはまず『バスカヴィル家の犬』を LEGO で再現した映画の鑑賞会(約 45 分)を行いました。これは 2015 年にチェコの方が作成されたもので、なかなかハイレベルながら、チェコ語と英語でしか観ることができませんでした。そこで、制作者の許可を得て、主催者自らが字幕翻訳をし、鑑賞会をが実現したわけです。

主催者はかつて翻訳学校で字幕翻訳を勉強し、翻訳の仕事もしていました。今回の翻訳も本当の映画字幕のルールに従って作成したので、素人の翻訳の域は出ていたと自分では思っています。『バスカヴィル家の犬』は知っている物語なので、比較的翻訳はしやすかったものの、チェコ人の話す、抑揚のない早口の英語を文字起こしすることから始め、書籍と表記を統一しながら翻訳を進めていくのはそれなりに苦労がありました。その詳細はここでは省略しておきます・・・。

参加者の方の映画の感想は、「原作に沿ってよくできてる」「LEGO の人形がかわいい」など、いい評価をいただき、鑑賞会を開けてよかったです。

ハンドブック、プチセッション

さて、映画の鑑賞を終えて、読書会に入る前に今回の「ハンドブック」の説明をしました。シャーロック・ホームズ読書会では、毎回読書会の参考になるような資料を配付し、それを収めたファイルを「ハンドブック」と呼んでいます。

今回はホームズ作品の初期の出版経緯のまとめと、サンカノゴイ、エカルテの資料でした。サンカノゴイは『バスカヴィル家の犬』に出てくる鳥の名前で、その鳥の解説について面白い文章を書籍から見つけたので共有しました。エカルテも『バスカヴィル家の犬』に出てくるカードゲームの名前で、ヘンリー・バスカヴィルとジェームズ・モーティマー医師が遊ぶシーンがあります。どんなゲームか知りたかったので、遊び方を書籍で調べてお配りしました。

初期の出版経緯のまとめを配布したのは、主催者が個人的に最近 ebay(海外のネットショップ。オークションも行われる。)で『バスカヴィル家の犬』の英国初版本のオークションに挑戦したからです。オークションに参加するには、その書籍の価値を知る必要があり、そのような必要に迫られて初期の出版がどのように行われたのかをまとめてみました。通常初版本は 30 万円程度で取引されているようですが、そのオークションは約 5,000 円からのスタートで非常にお値打ち。しかし、当然ながらみるみる価格が上がって入札は途中で諦めました。最終的には6万5千円ほどで落札されました。落札はできなかったものの、オークションに挑戦するのは初めてだったので、面白い経験でした。

また、これも ebay で入手したドイツのミニチュア本も持参し、ご覧いただきました。英語版『バスカヴィル家の犬』を全テキストを、手のひらサイズにしたものです。

ebay は世界中のホームズグッズが手に入る、コレクターには嬉しいサイトです(ただ、ポンポン買っていたらお財布的には大変ですが)。英語ができる方は挑戦してみてはいかがでしょうか。

このような感じで、読書会以外にも、ホームズと関連のあるものなら何でも扱うのが、本読書会の特徴です。

読書会

それでは、読書会で出た代表的な意見をご紹介します。

・子供の頃、初めて読んだホームズの本が『バスカヴィル家の犬』だけど、内容がインパクトがあってずっと忘れなかった。
・「か弱い女性を助ける」という昔ながらの価値観の話。
・犬を飼う人は多いので、犬が人を襲うという設定はこわい。
・本作や『嵐が丘』のようなイギリスの風景がミステリーとしてのムードに説得力を増す。
・犬は想像上のものかと思えば、ちゃんと実在することに驚いた。
・ワトスンが主役の物語になっている。
・これまで読んだ中では一番好き。
・絵画を観に行ったり、ホームズは頭の切り替えを意図的にしている。
・ワトスンによる美人描写が面白い。(ワトスンは美人については何行に渡っても描写をするのが定番です。)
・ステープルトンが考えていた遺産継承方法はリアリティーがあるのか。
・モーティマー医師の犬が魔犬に食べられることは、人が人を殺す殺人のメタファーかも。

毎回のことですが、ホームズ作品を読んでいると同じ結論に達します。「読みながらケチを付けると切りがないけど、結局なんだかんだで面白い」ということです。100 年以上前の、現在とはまったく世界観の世界を知ることができるのはワクワクする体験です。さらに、さまざまな出版社の翻訳を読み比べたり、背景知識について知ったりもできます。読書会では、各人の問題意識やスタンスの違いで読み方が当然違ってくるので、それを聞いたりするのもいろいろな発見があります。

新コーナー「私のホームズ語録」

これまで読書会でたびたび話題に出るのが「ホームズ語録」です。ホームズが使った特徴的なセリフや、繰り返し使われるセリフなどのことをホームズ語録と呼んでいるようです1)

そこで、今回から我々も自分たちでホームズ語録を作る試みをしてみることにしました。そこで、アンケートでお気に入りのセリフを記入いただきました。結果は以下のようになりました(セリフはすべて創元推理文庫によるもの。ページ数が若い順。)。

  • 「きみは日ごろ僕のささやかな仕事の成果をああして好意的に世間に発表してくれてる、そのなかで、とかくきみ自身の能力を軽く見すぎるきらいがある、僕はそう思うんだ。いってみれば、自ら光り輝く発光体ではないものの、その光をじゅうぶんによそに伝えられる良導体、それがきみなのさ。世のなかには、自分自身は天才を備えていなくても、その天才を刺激するというすばらしい力をそなえた人間がいる。というわけででね、わが親愛なるワトスン、ぼくはおおいにきみのおかげをこうむってるというのがほんとのところなんだよ」(p11)
  • 「こいつはおもしろい__といっても、初歩的なことだが」(p12)
  • 「ついに三本めの糸も切れたよ。すべては振り出しにもどったってところだ。それにしてもいまいましい、狡猾(こうかつ)このうえない敵じゃないか!」(p101)
  • 「新石器時代人が眠っていたはずの」(p233)
  • 「きみ以上にぼくのほうが責任重大だよ、ワトスン」(p252)

* * *

読書会後は一部参加者の方と近くのお店でランチをいただきました。

次回予告

次回の読書会は、5月5日(土)午前に、中村生涯学習センターで行います。課題本は『シャーロック・ホームズの復活』です。『回想のシャーロック・ホームズ』の最後でホームズが大変なことになりましたが、一体あの後どうなるのか。次回の読書会も見逃せません!

1)
河出書房新社版の注では、「このセリフはあの作品とあの作品でも使われてる」のように、同じセリフが出ている作品がリストアップしてあったりします。
followup-readholmes5.txt · Last modified: 2018/07/26 07:05 (external edit)